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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 ジーン10月号のあとの、山陽新幹線と秋田新幹線の話。
 東海道新幹線は実際には山陽新幹線を使った実験を行っていませんのでご安心ください。だといいなと思って。

 拙ブログを訪れてくださる方、いつもありがとうございます。ことに、拍手を下さった方、励みになります。細く長く楽しく、続けていきたいと思っています。

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おさなごころの君

 東海道新幹線が満足して靴音高く上官室を出て行くと、山陽新幹線はちゃちな紙箱をひょいと外して、ああ、せまかったと首を鳴らしながら出てきた。
「乗ってくれてありがとな、秋田」
「いいけどさ、こんなんでほんとに東海道の役に立つの?」
いまの今まで二人につきあっていた秋田新幹線が、あきれた目をむける。
「立つ、立つ。やっとだ。やっと東海道が、やりたいことをやれるようになってきたんだ」
山陽は嬉しそうだ。
「やりたいこと、ねえ。ばかばかしい会議ごっこや、山陽いじめの茶番劇が? まあ、東海道がストレスをぶつけてるのは見ててわかるけどさ」
「そう、ごっこ遊びだよ。遊びかたを知らない大人の『子どもっぽさ』かな。あいつ、たぶん子どもらしい遊びをしてこなかったと思うんだよね」
「……まあ、きみが言うならそうなんだろうな。会議ごっこのときは山形たちもつきあってたし。長野がいないときを狙うあたり、なんだかなって思うけど」
「長野には、格好よくありたいんだろうな」
「せこい」
 秋田がめずらしく苛々しているのは、おふざけとはいえ、東海道のブラックぶりにあてられてしまったからだ。
「逆に考えればさ、おれたちには甘えられるってことだ」
「でも、きょうのはさすがにドン引きしたよ。東海道、なんか…おかしいんじゃない?」
「東海道も九州も、かっとんでるよな。だからあのポジションが務まるのかもと思うことはあるよ」
「山陽はいいの。人柱とか毒ガスとか、そんなこと言われて悔しくないの」
「おれは、むかしごくつぶしだったんだ」
いい天気だなとでもいうように、さらりと山陽がこたえる。
「ゴクツブシ?」
「穀、潰、し」
一拍おいて意味を理解した秋田は、だまって表情を硬くした。
「必要としてくれる人がいたから、役立たずとまでは言わないけど。だから、役に立てるなら何だって嬉しい。まして、あの堅物の人見知りがさ、こんなことできるのがおれだけなら、望むところだ」
「ちょっと、なんだよそれ。卑屈すぎないか!?」
秋田の苛々が怒りになる。
「や、卑屈じゃないよ。むしろアドバンテージ?」
山陽はいつもの笑顔だ。それが秋田にはゆるせない。
「いやだ。なんかすごく嫌。理解できない」
「だって、あいつ怖がりだし。ほかの誰にも、ここまで遠慮なくできないし」
「それが、なに!?」
「それはある意味、特別だってことだ。おれにしか、できないことだ」
「やっぱり卑屈だよ。東海道、ひどいよ。そんなの間違ってる」
「そうかなあ。どこが?」
「………………」
面とむかって問われると、明確に反駁ができない。当事者ふたりの息の合った「ごっこ遊び」であることは間違いない。
「あいつは激情型だけど、悪いやつじゃないから。ほんとうにひどいことはしないよ。ひどいことは…理不尽にやってきて、避けるすべがないんだよ」
「そんなこと知らない」
「知らないなら、そのほうがいい」
 底のみえない先輩に、ミニ新幹線がくちびるを噛む。らしからぬしぐさに先輩はほほえむ。
「秋田はいいな。いいものだよ」
「山陽。ぼく、次からきょうみたいな茶番に乗らない」
「え」
それは困る、と顔にかいた山陽を
「きみがこれをひどいと思えないなら、東海道のためでも、しちゃいけない。二度と自分のこと、穀潰しとか言うな。東海道の仕打ちをひどいと思え、卑屈だって気づけ!!」
秋田が叱った。
「きみのしてることは、きみのためにも東海道のためにもならないよ。ぼくは学もないし経験も浅いけど、これはわかるよ。眠れないのとご飯がまずいのと、自分を低く見積もるのは、すごく身体に悪いんだよっ」
「そう、かな?」
なまはげを宿した怒気にも、山陽は首をかしげるだけだ。
「そうなのっ! ったく、きみといい東海道といい、なんでわかんないかな。もうはらわたが煮えくりかえってどうしようもないよ」
息を荒らげる好青年を、山陽はどこか遠く、まぶしげに見やる。
「ありがとな、秋田」
「いいえ、どういたしましてっ。むかつくから、礼はぼくの言ってることがわかってからにしてくれ!」
「とりあえず、飯をおごるよ。それはいいだろ?」
「……まあ、ごはんに怒ってもしょうがないからね」
憎まれ口をたたきながらも機嫌のなおっていく秋田に、山陽はへらりと笑った。
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プロフィール
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削谷 朔(さくたに さく)
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自己紹介:
山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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