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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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こんにちは。
(拍手やメッセージをくださった方々、ありがとうございます。
なかなか更新できませんが、ほんとうに励みになります)
春ですね。
おとといは西武新宿と安比奈の結婚記念日でした。きょうは39の日だとか。
北海道新幹線は開業するし山陽九州直通五周年だし、おめでた続きですね。
形海の日はないのかな。むりやりだけど8月8日をやまばとはとの日とかどうでしょう。

さて。春コミ開催のプチオンリー「AROUND TSUBAME」さま発行の
アンソロジー「花咲か燕の時巡り」に拙文を載せていただきました。
また「AROUND TSUBAME」さまの本部に無料配布ペーパーの委託をお願いいたしました。
どちらもつばめちゃんとつばめ様のSSです。
拙文はともかく、豪華執筆陣による「おめでとう」あふれる華やかで幸せな空間が
広がっていると思いますので、春コミご参加のかたはどうぞ足をお運びくださいませ。

下記は、東海道新幹線開業50周年のときに、ある方にお贈りしたSSです。
山形×東海道と山陽×九州で、ほかの上官たちも少しだけ出てきます。
再録の許可をいただいたので、よろしければ。

+ + + + + + + + + +

みみかき 

「東海道にのろけられちゃったよ、もう」
 ぼやきながら秋田新幹線が上官室に入ってきたのは三日前。
「あの、色気ゼロ系が?」
「なんておっしゃったんですか」
山陽新幹線と北陸新幹線がおもしろがってたずねた。上越新幹線は無表情の山形新幹線を見やり、東北新幹線が、当の東海道はいないから面倒なことにはなるまいと傍観している。
「膝が痛いってぶつぶつ言ってるから心配してあげたらさ、『ゆうべ山形の耳かきをしてやったら、そのまま寝てしまったのだ。きもちよさそうでな、動けなかった』ってさ」
「膝枕ですか!」
「耳かき…?」
「あいつのことだから、のろけだって気づいてないんだろうなー」
「ってか、耳かき?」
ああもうこのバカップル、と呆れながら、全員が東海道の尋常でない不器用さを思う。照れるでもなく書類に目を通している山形に上越が叫んだ。
「耳かき、させるの! 東海道に!? 怖くないの?」
山形はゆっくり穏やかな顔を上げた。
「怖くはねえよ。時々、血を見るけんども」
「えっ」
「血…」
「時々……」
どんびきの同僚たちに、にっこりと。
「へいきだ。すぐに治るべ」
しばしの沈黙のあと、秋田がつぶやく。
「愛の力だね…とても真似できないよ」
一同うなずいて、力なく同意を示した。
 それからだ。
 東海道に対する山形の態度が、東海道以外には気取られないていどに、どことなくよそよそしくなったのは。


 今夜は立食のパーティだった。
 たてつづく開業50周年の式典。式典のあとには祝賀会がつきもので、つまり東海道新幹線はこの半月というものイベント続き、式典尽くし、過密ダイヤの運行に加えて緊張を伴う社交を毎晩のようにこなしてきたのだ。
 社交場には正直なところ飽き飽きしていたが、今日はすこし違っていた。東海道のみならず、新幹線の仲間たちも招かれていたからだ。
 着飾ったひとの行き来する広間のすみに隠れて、東海道はすこし離れたひとを見ていた。
 金、銀、紅、白、きらびやかな舞台にとけこんで、完璧な笑顔で社交する山形新幹線だ。フォーマルなダークスーツに身をつつんで、目をうばわれる立ち姿。かすむことも目立ちすぎることもなく、ごく自然なものごしで。場慣れしているわけでもないはずなのに、おだやかで堂々として、ととのっている。
 そのとなりで笑っているのは九州新幹線。とびきり上等のタキシードにふさわしい艶と気品。細身だが華やかな存在感が彼の半生を示している。いずれ劣らぬ長身のふたりは絵に描いたようにうつくしく、旧友のようにくつろいで談笑している。
 ふと、山形が東海道に気づいた。それを追って九州も視線をよこす。東海道の心臓が強く打った。
 が、山形は取り皿を持つ左手にグラスをもちかえて、空いた右手をひらひらと振ってみせただけだった。九州も口元を笑いのかたちにゆがめて山形に視線を戻し、会話をつづけたようだった。
(山形…声をかけてくれない。こちらに来てもくれない。あいつが、九州がいるところになぞ私から近づかないことを知っているのに)
東海道の胸がずんと重くなった。でもそうかもしれないと、どこかで思っていた。だって最近の山形は。
「こんなとこにいた」
 突然、背後から声をかけられて、思わず気をつけの姿勢をとる。光沢のあるグレイッシュブルーのスーツにアスコットタイ。茶髪の伊達男が優しげにのぞきこんでいた。
(こいつも背が高いのだな)
そんなことを思う。
「どうしたの、主役はひっぱりだこでしょうよ。疲れちゃった?」
軽い口調は自分の味方だ。東海道は無意識に休めの姿勢になった。
「ちょっとな。もうすぐ行く。人前に出るのが今夜の仕事だ」
ため息をつきながら山形と九州のほうに目がいく。
「なに。あのふたり?」
それに山陽新幹線が気づかないわけがない。
 東海道が口をへの字にして黙り込むと
「けっこう普通に話してるな。おれも、ちょっと意外」
などと、なんでもなさそうに言う。
 たしか山陽と九州は、ちょうど自分と山形のように特別な間柄だったはずだと思い、
「きさま、それでいいのか。なんとも思わないのか」
気心の知れた相棒に、おもわず東海道のわがままが出た。
「なに、東海道ちゃん妬いてるの」
「へらへらするな、この優男!」
山陽が九州を連れまわしてくれれば山形がフリーになるのにという、純然たる八つ当たりだったが
「だってさ。同じころに特急だった同士、昔話でもしてるかもじゃん?」
へらりと返した声音は、えもいわれぬ響きだった。
 ぽろり。
 なにが東海道をゆさぶったのか、一粒だけ涙がこぼれた。
「えええ、東海道っ。どうした、なんで泣くのこんなところで!?」
「山形が、最近、山形がちがうのだ。なんだか怒っているようで、つ、冷たいのだ……」
ここ二、三日の気がかりを吐きだした東海道は、うわあああんと泣き出すかわりにうつむいて、くちびるを噛んだ。


 社用車で宿舎に帰ったのは東海道が最後だった。車の音がしたからだろう、寝巻き姿の山形が玄関におりてきてくれた。顔を見るだけでほっとして、東海道は「ただいま」と告げた。いっしょに階段をあがったところで
「お疲れ様。ゆっくり休みなっせ」
そう言って自室に戻ろうとする山形のうしろを、東海道はだまってついていく。
「なしたぁ、明日も早いんだべ」
足を止めて問いかける山形に
「それは、お前の部屋に行くなということか」
うつむいて東海道がたずねる。
「そういうわけではねえけんども」
歯切れの悪い返答に、胸が痛む。
「では、邪魔する」
うつむいたまま山形の部屋へ入った。
 東海道がいつもの座布団に座ると、山形は台所に立った。
「酔いざましに茶でもいれっがら、ネクタイば外して、楽にしててけろ」
「茶はいいから、座ってくれ」
深刻な様子に、山形がガスの火をとめて座卓の向かいに座ると
「山形、すまない。謝らねばならない」
東海道がいきおいよく頭を下げた。
「私は馬鹿だ、鈍感だ。ちっとも気づかなかった。耳かきのときに、まさかお前の耳を傷つけていたとは……」
「その話、どこで仕入れてきたんだず」
沈痛な面持ちの東海道とは対照的に、山形は無表情だ。
「山陽が教えてくれた。お前が最近なんとなく冷たいのだと言ったら、それが原因ではないかと……」
ぴくりと山形の眉が跳ねた。
「痛い思いをさせていたとは、ほんとうにすまなかった。もう耳かきをしたいなんて言わないから安心してくれ、山形」
「それは困るなあ、とうかいど」
のんびりとした訛が薄めのくちびるから生まれる。
「しかし、私の耳かきで何度も出血したと聞いた」
「あれは方便だず」
「ほうべん?」
「ああ言っとけば、だれもおめさに耳かきば頼みにこねえ。真っ赤な嘘だがら、また耳ば掻いてけろなぁ」
訛はあくまでも優しくて、無表情とのギャップに東海道は緊張した。
「うそ……」
思いもよらないことに呆然とする。では、なにに怒っていたのだと、すがる目で恋人を見上げた。すると、その鼻を長い指でつまみ上げて
「おめさが迂闊だがら」
こんどはほんとうに柔らかい訛で教えてくれた。
「おめさが口をすべらせたせいで、ひめごとの端を知られてしまったが」
と。
「ふたりだけのことだず。んだな?」
こくこくと、東海道は必死で首を振る。自分は嫌われたわけではなかった、山形は怒っていたのではなく、拗ねていたのだと、ようやく理解した。
「おめさが耳ば掻くのは、おれだけええ」
 な? と。
 色めいた、よほど怖い目で笑まれて、東海道は真っ赤になって固まった。
(さ、さっきお前が言ったとおり、明日も早いのだが……)
予感したとおり、長い長い夜になった。


 せっかくJRが、しかもあの経費に慎重なJR東海が宿舎まで社用車で送ってくれるというのに祝賀会場のホテルに部屋を取ったのは、九州が疲れた、移動が面倒だと言い出したからだ。なんだ、ただのツインか、といつものように感想をのべる九州に
「いちおうデラックスツインだよ。おまえね、いつもいつもスイートとか無理よ。さんよーさんは庶民なんだから」
ニュートラルに返しながらタキシードの上着を脱がせてやる。
「うわ、重いなー。いくらいいものだからって、これじゃあ肩も凝るわ」
「だから疲れたと言っただろう」
「そうじゃなくて、軽いの着ようよって話」
「それは昔にあつらえたからな。頻繁に着るものでもないし」
すると、山陽は礼装のブラックタイをじっとみつめた。
「どうした」
こんどは九州が脱がせてやりながらたずねる。山陽のジャケットの、光の具合でグレイのなかにあらわれるブルーは500系の青だ。
「…………礼装だな、と思ってさ。おれたちは、山形でさえスーツだったのに」
「タキシードは、祝意をあらわす装いだからな」
「いいなー。とうかいどうってば、愛されてるなー」
冗談に本音をまぜこむ。
「気持ちの悪いことをいうな。安心しろ、きさまの時にはホワイトタイで祝ってやる」
「ホワイト……って燕尾服!? い、いいですいいです遠慮しますっ」
「最上級だぞ、嬉しかろう」
「かえって恥ずかしいよ、皇居とかのパーティーじゃないんだからさ、浮きまくりだよ」
「近年は宮中晩餐会もブラックタイになったそうだ。なに、人目なぞかまわん。要は気持ちだ」
「かまうよ、おれは庶民なの、燕尾服なんて別世界なの、それに宴会も仕事なの、稼ぎどころだし今後につながる大事な営業なの、邪魔しないでくれよおおぉ」
泣きまねをしたら、九州がぷいと横を向いた。まずい、と山陽は声も表情もイケメンモードにきりかえる。両手で顔をはさんで、眼鏡の奥をみつめて。
「じゃあさ、おれの50周年まで付き合ってたらさ、おれだけに着てみせてよ。九州新幹線の最高の正装を」
 

 なかなおりなんて、なんとなくしてしまうもので。
 ねえねえ耳かきして、と言い出したのは山陽のほうだ。山形が膝枕で寝てしまった話を聞いてから気になっていたのだ。甘えるなと一蹴されるかと思ったが、なんと鞄から金色のマイ耳かきを取り出して、恋人はベッドに正座をしてくれた。
 ごろりと寝転ぶと、暗い、見えないといってヘッドボードのそばに移動させられた。九州がスタンドの光量を最大にするのをながめながら、しあわせだなあと山陽はにやける。
「ふん。腹を出して全面降伏の体だな。きさまをどうしようが私の勝手、なすがままというわけだ。ゆかいゆかい」
「うーん。きもちいいよ九州、うまいねえ」
軽口をたたいていたのも束の間で、九州は真剣に耳垢と格闘し始めた。
「動くな馬鹿者。あっこら、大きいのがもうすぐ、もうすぐ取れるというのにっ」
疲れていたんじゃなかったのか、と内心でつっこみながら山陽は弛緩しておまかせ状態。粘膜を繊細にさぐられるのは快い。
「……………………よし!」
やがて、九州は見事に敵を捕獲したらしい。ふーーーーーーっと大きく息をついて得意げに耳かきの先をみせびらかす。
「おー、さすが九州。大物だな」
山陽はぱちぱちと手をたたく。
「ありがとな。つぎは俺がしてやるよ、耳かして」
「む。私はいい」
怖がっているのだろう、とたんに腰が引ける九州を山陽はかわいいと思う。
「まあまあ」
「かまうな」
「だいじょうぶ、痛くしないよ」
「だだだれも怖がってなど、あ」
転がされ、ひざまくらの体勢になる。しかし耳かきは離さない。
「しかたないなあ。じゃあ、こっちできれいにしてやるよ」
イケメンはそんなことを言って恋人の耳に口をつけた。
ちゅう。ぺろ。ねろり。
「んん…っ」
「これなら痛くないだろ」
いいながら、奥まで舌をさしこむ。あくまでも優しく。
「ばか、も、の」
「こうしたら、ちょっと痛いかな」
かりり。みみたぶを甘がみ。
(しってるよ。おまえ、耳も背中もうなじも弱いの。こうなったら、もうさ。なすがまま、ってやつだよね。逆鱗に触れるから、ぜったい口には出さないけどね)
たたき上げの新幹線は好色に笑った。
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削谷 朔(さくたに さく)
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鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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