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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 「君を恋う 7」の続きです。




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君を恋う 8

 気を失っていたらしい。全身のにぶい痛みで目がさめた東海道新幹線は、背中にからむ山形新幹線の腕に身体の自由が奪われているのに気がついた。苦しいが、嫌ではない。シングルの狭いベッドに二人でおさまっていられるのは密にふれあっているからで、山形が東海道をささえているともいえた。
 まだ暗い。目が慣れてくると、東海道はぼんやりと恋人を見上げた。ととのった、白い貌。たいがい穏やかなそれが、今夜は眉間のしわが深い。自由になる左手をのばして、しわに触れる。
(なにがあった、山形)
ひたいと眉間をそっとなぜる。くりかえし、くりかえし。やがて眉根がゆるんできて、東海道はほっとした。
(こんなおまえを初めて見た。こんなに……)
 思いながら、頬が赤らむ。
(こんなふうに、思いをぶつけられたのも、初めてだ)
おどろきと、心配と、疑問と、衝撃。知らない山形がそこにいた。知っているような気になっていた、浅はかな自分がここにいる。
 ふいに不安になって、東海道は身をよじった。痛む身体をひきずって、山形の顔をよく見ようとずり上がる。すると、山形の腕がしがみつくように拘束を強めた。痛みにぞくりとして、音にならない声があがる。全身の震えをじっとこらえる。背骨がきしむほど抱きすくめてきながら、山形がまだ目をさまさないのに、東海道はすこし笑った。
 そして、甘美な。
(わたしは)
一瞬、思考がとまる。東海道の良識が感情に抵抗した。しばしの羞恥と葛藤をへて、たえがたく恥ずかしいが目をそむけることは卑怯だと、東海道は自分の気持ちを見すえる。
 甘美な、麻薬のような快感が、たしかにあった。
 名があるからでも、稼ぐからでもなく、ただ自分自身をくるおしく求められることの恍惚。
 認めると、いとおしさがあふれた。まぢかにいる山形に東海道の想いが流れだす。山形の眠りを妨げるのもかまわず、勢いのままくちづけて、東海道のぜんぶで抱きしめた。

 目ざめさせられた山形は、おどろいて数回またたいた。それから目を細めると、意志をもって恋人を征服しはじめた。体力の限界を無視して、東海道もこたえる。そして、まだどこか剣呑な愛撫に
(だっておめさが、と言った……山形)
記憶をよびおこされて、はっと息をのんだ。
(まさか、おまえの異変の原因は、わたしにあるのか)
 濃密な感情にゆさぶられながら、東海道はこころに刻む。忘れるな、考えろ。自分が山形におよぼしたことを思いおこせ、と。
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削谷 朔(さくたに さく)
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山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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