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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 「近くの彼 1」の続きです。

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近くの彼 2


 テーブルに並んだ昼のメニューは、たきたてのご飯、大根とにんじんと鶏肉の煮物、きんぴらごぼう、ゆでっぱなしのブロッコリー、乾煎りの煮干、わかめときゅうりのポン酢しょうゆかけ。熱い麦茶がそえてある。変哲も飾り気もないが、すべて東海道の手作りだと思うと、山形は圧倒されざるを得ない。
 しかも、調理台には小さめのタッパーにつめられたご飯や惣菜がいくつも並べられている。さめたら冷凍して、平日の夕食や弁当にするのだと言っていた。調理が終わると、洗いものはあとでまとめて、と腰に手をあててつぶやき、ベランダで洗濯物を干しはじめた。
「待たせてすまないな、おかずが冷める前に終わらせるから」
といって。
 洗濯機はいつのまにか回してあったらしく、スムーズな家事の流れに山形は感心した。なにか手伝えることはないか、なべ釜を洗おうかと声をかけたが、しばらく水に漬けておいた方が洗いやすいし、あとで食器と一緒に洗うからと断られてしまった。
(片づけにも効率的な手順ができてるんだずなあ)
ふだん積極的に家事をしない山形は、ただ昼ごはんを眺めるばかりである。
「足りなかったら、ほかにもあるぞ。出そうか」
 そこへ、ベランダから戻ってきた東海道が、黙りこむ山形に気づかいをみせた。
「いんや、じゅうぶんだず。ごちそうだあ」
「遠慮するな。たんぱく質が足りないか」
「いや、ほんてんにごちそうだ、ありがたくいただくべ」
山形の本心だとわかったのか、東海道はほっと目もとを緩めると、席について両手をあわせた。山形もそれにならう。
「いただきます」
「いただきます」
 しばらく無言でご飯を食べる。気詰まりではない。しゃくしゃく、ぽりぽり、野菜の音がひびく。これといって特徴はないが、ごく普通においしく、安らげる料理だった。
 茶碗が空になりかけたころ、山形はわれ知らずため息をついた。なんだかおかしい。けっして悪いものではないのだが、体じゅうのねじがゆるんで、頭がぽおっとしているような気がする。こんな自分に覚えがない。
「どうした、疲れたか」
はっと気づくと、目の前に東海道の心配そうな顔があった。職場では見たことがない、目じりの下がった表情。
「無理するな。残してもいいぞ」
強くはないが、頼りがいのある落ちついた声。
(これは、なんだ)
 山形は愕然とする。風をきって走る夢の超特急でも、泣き崩れる廃止特急でも、気難しい問題児でもない。長いあいだ、山形が見てきた彼ではない。
「おめさは…」
お前はだれだ、と訊いてしまいそうになって山形はやっと正気にかえる。
「山形?」
のぞきこむ黒い瞳に、山形の芯がふるえた。

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削谷 朔(さくたに さく)
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山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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