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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 両思いになって間もないころの、東海道新幹線の話。
 上越新幹線がちょっと顔を出していますが、ほとんど東海道しか出てきません。



+ + + + + + + + + +
まだ知り初めし

 感情とは不思議なものだ。
 ずっと前は一人だった、以前のほうが孤独だったと思う。
 なのに、大切なひとを得た今のほうが、ものさびしいなんて。

 店さきの広告に吸い寄せられるように純米酒とつまみを買って、東海道新幹線は帰途についた。一人で飲む習慣のない、かつ財布の紐のかたい東海道にしては珍しいことだった。
 宿舎の玄関ロビーで行きあった上越新幹線は、一升瓶に
「アルコール? きみが?」
と興味を示したが、銘柄を確かめると、ああ、と微笑った。
 東海道は、これから一緒に飲むかと同僚を誘ったが、上越は優しい目をして
「それは、きみが味わいなよ」
と遠慮した。
 なんとはなく寂しかった東海道は、いささかがっかりしたが、おもてに出すほど子どもではない。では、また明日と挨拶して自室に帰った。
 携帯を充電器にさして、シャワーを浴びる。髪を拭きながら携帯を確かめて、特に着信がない、まだ寝る時間でもないと一人でうなずく。
 広くはない部屋を手もちぶさたに見回して、支給品のパジャマに袖を通す。
 夜のニュースを聴きつつ夕刊に目を通す。インターネットもひととおりチェックしてから、読みかけの本を取り出す。ビジネス書やハウツー本、ノンフィクションといったものが、役に立つ気がして東海道は好きだ。
 もういちど携帯を一瞥して、買ってきた純米酒をとっくりに移し、レンジで燗をする。冷凍してある小松菜のゆでたのをおひたしにして、買ってきたつまみの封を切る。
 日本酒は「みちのくやまがた」、つまみは「山形の干し牛肉」とラベルがついている。
 本のページをめくりながら、大切なひとにゆかりのあるものを味わう。
 東海道の大切なひとは、今日は新庄泊まりで近くにはいない。本当は会いたくてたまらない。連絡がないかと携帯に気をとられるし、たしかに寂しい、寂しいけれども。
 その寂しさを肴に夜を過ごす贅沢がある。
 なんと甘いさびしさかと思う。

 その夜、東海道にメールは来なかった。東海道からも連絡をしなかった。
 まだ知り初めし新幹線は、鉄道でありながら、人間に近づいていく心持ちをあたためた。
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プロフィール
HN:
削谷 朔(さくたに さく)
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非公開
自己紹介:
山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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