青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。
同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。
実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。
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デザートタイム
リニアの中間駅の構想が発表された。
たいへん簡素で機能的、シンプルの極みだと話題になった。
巷では賛否両論が起こった。いわく、駅の原点にかえった。中間駅を通り過ぎる気満々。一銭も出さない自治体への怒りがほの見える。
もちろん、天下の東海はびくともしない。
昼休み、昼食を終えた上官たちのあいだでも話題になったが、東海道新幹線は高らかに言い放った。
「そもそもだ、一階の大部分は賃貸用のテナント用地だ。現時点で予定が白紙であるのは、無限の可能性があるのと同じことではないか。駅を栄えさせたければ、自治体なり地元企業なりが資金提供をすればよい。なんなら駅ビルを作ってくれても、わが社はいっこうにかまわないぞ!」
「JR東海は負担なしで、と」
秋田新幹線が返すと、
「むしろ、テナント料を取ってね」
上越新幹線がかぶせる。
「あたりまえだ。ただでさえ駅の建設費については全額! わが社が! 出してやることになったのだ。さらに地元の発展に寄与しろというのならば、功績は報われてしかるべきだ」
胸を張る東海道に
「おまえ、そういうとこ九州に似てるよな…」
脱力するのは山陽新幹線だ。
「しかし、駅の設備が事務所と出入口と手洗いだけというのは、露骨、いや、そっけなさ過ぎるのではないか」
東北新幹線が冷静に述べると、東海道は
「ホームと階段とエレベータ、エスカレータも完備しておるわ」
と指摘して
「それは…言うまでもありません、東海道先輩…」
と長野新幹線を戸惑わせる。
だれもが黙り込んだところに
「んだなあ、たしかに、なんつうか」
微妙な口調で斬りこむのは山形新幹線だ。
「切符売り場もないのは、斬新だずなあ」
が、
「そうだろう。従来の形にとらわれず、これからの情報化社会を見すえた思い切った構想なのだ」
そのニュアンスに気づく東海道ではない。
「さすがは山形、わかっているなあ」
リニアの輝かしい未来図に、ひとりご満悦である。
「まあ、せっかくみんな揃ってるで、たまにはアイスでも食べんべ」
とりなして冷蔵庫へ向かう山形に、秋田と長野の顔がぱっと明るくなる。山形の買い置きはいつもおいしいのだ。
山陽と上越は(出た、山形のアイスクリーム)と無言で見交わす。常備してある「山形のアイス」は本当に美味い。そしてたまにしか振る舞われない。主に東海道が落ちこんでいる時とか東海道の気をそらせたい時とか、だれかを懐柔したいときとかである。
アイスクリームは保存がきくだけでなく、おいしくて気持ちを満たされてしまう。さらに、溶ける前に食べなければならないから、時をおかずに場が和むことが多い。今回は、東海道への風当たりをやわらげたいというサインだと二人は了解する。
山形は無言で紅茶とともにアイスをサーブした。
「ありがとうございます、山形先輩」
「いただくぞ」
「ありがとう」
「ごちそうさま」
「サンキュ、おいしそう!」
「すまんな」
暗黙のルールで長野が一番に好きな味を選ばせてもらうと、あとは適当に各自が手を伸ばす。
しばし無言で、全員で濃厚な冷たさを味わっていると、いち早く食べ終わって上機嫌になった秋田が話をむしかえした。
「それにしても、中間駅の報告書、すごいよね。『当社が建設費を負担して整備しますが』って、冒頭から宣言して、強気な感じ? 今後、地元とうまくやってけるの?」
「いい質問だな、秋田」
東海道はくせっ毛を立てて、しかし秋田ではなく長野に目を向けた。
「長野。以前、お前のところも自治体がもめていると相談に来たことがあったな」
「はい、東海道先輩」
「いいことを教えてやろう。金を出させなければ、口出しされることもないのだ」
スプーンをなめながら、長野の表情に驚きと尊敬が広がる。
「はい! 東海道先輩!」
素直な長野の目に、自信満々な東海道は、すばらしく格好よく映っているに違いない。が、大人たちは一名を除いて肩を落とした。
(つまり、自治体とうまくやる気はないってことだね)
(金って力だよな。ま、この件じゃ自治体の態度もひどかったしなぁ)
(いや、東日本の財政じゃそれ、無理だから)
(うちの長野に無茶なことを吹き込まないでもらいたい。が、口を開くのは面倒だ)
しかし長野の気持ちを慮ってか、昼休みが残り少なかったためか、アイスクリームが効いたのか、それ以上を追求する者はなかった。
そして肩を落とさなかった大人、山形新幹線は
(さすがは日本一の路線だず)
と、無表情でBTに見惚れていた。
リニアの中間駅の構想が発表された。
たいへん簡素で機能的、シンプルの極みだと話題になった。
巷では賛否両論が起こった。いわく、駅の原点にかえった。中間駅を通り過ぎる気満々。一銭も出さない自治体への怒りがほの見える。
もちろん、天下の東海はびくともしない。
昼休み、昼食を終えた上官たちのあいだでも話題になったが、東海道新幹線は高らかに言い放った。
「そもそもだ、一階の大部分は賃貸用のテナント用地だ。現時点で予定が白紙であるのは、無限の可能性があるのと同じことではないか。駅を栄えさせたければ、自治体なり地元企業なりが資金提供をすればよい。なんなら駅ビルを作ってくれても、わが社はいっこうにかまわないぞ!」
「JR東海は負担なしで、と」
秋田新幹線が返すと、
「むしろ、テナント料を取ってね」
上越新幹線がかぶせる。
「あたりまえだ。ただでさえ駅の建設費については全額! わが社が! 出してやることになったのだ。さらに地元の発展に寄与しろというのならば、功績は報われてしかるべきだ」
胸を張る東海道に
「おまえ、そういうとこ九州に似てるよな…」
脱力するのは山陽新幹線だ。
「しかし、駅の設備が事務所と出入口と手洗いだけというのは、露骨、いや、そっけなさ過ぎるのではないか」
東北新幹線が冷静に述べると、東海道は
「ホームと階段とエレベータ、エスカレータも完備しておるわ」
と指摘して
「それは…言うまでもありません、東海道先輩…」
と長野新幹線を戸惑わせる。
だれもが黙り込んだところに
「んだなあ、たしかに、なんつうか」
微妙な口調で斬りこむのは山形新幹線だ。
「切符売り場もないのは、斬新だずなあ」
が、
「そうだろう。従来の形にとらわれず、これからの情報化社会を見すえた思い切った構想なのだ」
そのニュアンスに気づく東海道ではない。
「さすがは山形、わかっているなあ」
リニアの輝かしい未来図に、ひとりご満悦である。
「まあ、せっかくみんな揃ってるで、たまにはアイスでも食べんべ」
とりなして冷蔵庫へ向かう山形に、秋田と長野の顔がぱっと明るくなる。山形の買い置きはいつもおいしいのだ。
山陽と上越は(出た、山形のアイスクリーム)と無言で見交わす。常備してある「山形のアイス」は本当に美味い。そしてたまにしか振る舞われない。主に東海道が落ちこんでいる時とか東海道の気をそらせたい時とか、だれかを懐柔したいときとかである。
アイスクリームは保存がきくだけでなく、おいしくて気持ちを満たされてしまう。さらに、溶ける前に食べなければならないから、時をおかずに場が和むことが多い。今回は、東海道への風当たりをやわらげたいというサインだと二人は了解する。
山形は無言で紅茶とともにアイスをサーブした。
「ありがとうございます、山形先輩」
「いただくぞ」
「ありがとう」
「ごちそうさま」
「サンキュ、おいしそう!」
「すまんな」
暗黙のルールで長野が一番に好きな味を選ばせてもらうと、あとは適当に各自が手を伸ばす。
しばし無言で、全員で濃厚な冷たさを味わっていると、いち早く食べ終わって上機嫌になった秋田が話をむしかえした。
「それにしても、中間駅の報告書、すごいよね。『当社が建設費を負担して整備しますが』って、冒頭から宣言して、強気な感じ? 今後、地元とうまくやってけるの?」
「いい質問だな、秋田」
東海道はくせっ毛を立てて、しかし秋田ではなく長野に目を向けた。
「長野。以前、お前のところも自治体がもめていると相談に来たことがあったな」
「はい、東海道先輩」
「いいことを教えてやろう。金を出させなければ、口出しされることもないのだ」
スプーンをなめながら、長野の表情に驚きと尊敬が広がる。
「はい! 東海道先輩!」
素直な長野の目に、自信満々な東海道は、すばらしく格好よく映っているに違いない。が、大人たちは一名を除いて肩を落とした。
(つまり、自治体とうまくやる気はないってことだね)
(金って力だよな。ま、この件じゃ自治体の態度もひどかったしなぁ)
(いや、東日本の財政じゃそれ、無理だから)
(うちの長野に無茶なことを吹き込まないでもらいたい。が、口を開くのは面倒だ)
しかし長野の気持ちを慮ってか、昼休みが残り少なかったためか、アイスクリームが効いたのか、それ以上を追求する者はなかった。
そして肩を落とさなかった大人、山形新幹線は
(さすがは日本一の路線だず)
と、無表情でBTに見惚れていた。
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プロフィール
HN:
削谷 朔(さくたに さく)
性別:
非公開
自己紹介:
山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
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