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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 「まだ知り初めし」とおなじ夜の山形の様子です。
 山形しか出ていません。

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あめだま 

 山形新幹線は、今日も淡々と仕事を終えた。
 新庄の風はつめたい、けれどやさしい。今日は何もない、いい日だった。

 地元の宿舎へむかう道のり。
 故郷の木々といきものの気配が山形におだやかな時間をもたらしてくれる。すべきことを終えた疲労とささやかな達成感、安全を守れたことへの安堵が山形の気持ちを平らかにする。
 北の空は清澄だ。その中をひとりで歩む山形のこころも澄みわたっていく。満天の星に意識がほどけ、五感が空気とからみあう。遠く、まだ走っている車両のひびきがつたわり、近く、鳥のさえずりが聞こえる。澄んだ心にひとりの面影がうかぶ。

 そのとたん、意識は山形の身体に収斂した。

 ずいぶんと生身になったものだと思う。
 以前は、こんなことはなかった。どこまでも薄くさやかになって、ひろがって自然に溶けていけた。
 いつでも、どんな自分のなかにも、ひとりの人が住んでいる。大切な人が生きている。今夜は離れてすごすけれど、山形はもう独りにはなれない。鉄道は人間ではないけれど、生きて、育ち、変わるのだと彼が教えてくれた。
 すこしだけ、木々が遠くなった。それは山形の得たものの表裏だ。
 ポケットから飴玉を取り出す。好物ではないが、ときどき口にするようになったものだ。今日のように彼と顔をあわせる予定がないときも持ち歩くのは、いざとなったら彼の嫌う航空機を使ってでも駆けつけてしまうだろうと予感しているからだ。大事なひとのために用意したそれがポケットにあるということは、その日、彼に何ごともなかったということ。山形にとってのよいしるしだった。

 オレンジの門灯をともした古い宿舎が見えてきた。歩を進めながら、広がる星のように数えきれない、得たものを思う。飴玉ひとつぶんの幸せを味わいながら。
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プロフィール
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削谷 朔(さくたに さく)
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自己紹介:
山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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