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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 「君を恋う 1」の続きです。
 山形新幹線と、原作にいない職員が出てきます。
  

 拍手をくださいましたMさまへ。
 コメント、ありがとうございました。過分なお言葉にありがたくも恐縮します。
 嬉しさのあまり、がんばって山形×東海道を! と思いましたが、
 ラブストーリーって、難しいのですね。(すみません、所詮初心者でした…)
 まだ東海道新幹線すら出てきませんが、お言葉を励みに精進します。
 まずはお礼まで。ほんとうにありがとうございました。

+ + + + + + + + + +


 
君を恋う 2

 午前いっぱいをかけたので、事務作業がはかどった。静かな部屋で集中できたから、調べものがすすみ、未決の案件も方向性を定めることができた。私情で変更した仕事だが、時間を無駄にしなかったと山形新幹線はうなずく。
(明日は仕事を残さず休めそうだなあ)
考えてから、休むという単語にぴりりと神経がはねた。しかし、そんな自分を無視してミニキッチンに向かう。もう昼だ。食欲はないが、なにも食べずに現場に出ることはできないのでインスタントコーヒーをいれた。ミルクと砂糖を多めに、一杯。
 PCの電源を切り、携帯電話をマナーモードに設定し、懐中時計の時間を合わせる。制服の上着と白手袋を身につけ、姿見で全身を検分してから廊下へでる。出がけにエアコンと照明を切り、鍵をかけ、やはり連絡はなかったなと思いながら。

 山形新幹線を知る人々は多くないが、今日ばかりは社内で、構内で、ホームで、さまざまな関係者から祝いの言葉をかけられた。山形は歩幅をゆるめず、会釈や目礼で祝意を受け取っていく。首都圏では不要な言葉を発しない山形だが、端正な雰囲気とあいまって威厳があると尊ばれる傾向にある。
 13時08分、山形が乗りこんだ「つばさ」が定刻どおり運行をはじめてしばらくの後、乗務員のひとりが遠慮がちに山形を呼びにきた。ついていくと、乗務員室に小ぶりの駅弁とワインかシャンパンのミニボトルらしきものが用意されていた。
 まだ若手とおぼしき彼は、頬を紅潮させて言う。
「あ、あのっ、開業記念日、おめでとうございますっ。そんな日に、この『つばさ139号』にご乗務になられまして、ほ、ほんとうに、光栄です! ど、どうぞ山形までのあいだ、こちらで、おくつろぎになってくださいっ!」
目を輝かせて、うわずりながらも一息に言い切った彼は、ふかぶかと腰を折った。緊張のためか興奮のせいか、敬語も祝意の表しかたもいろいろと間違えているが、こころから山形新幹線を敬しているにはちがいないとわかる。どうしたものか、と山形は考えた。
(素直で、まっすぐなたちなんだべなあ。この歳でおれが見えるってことは、ほんてんに鉄道が好きなんだべ。憎めないけんど、職業人としては、ちいっと考えが足りねえなあ。コネ入社だずかなあ)
たっぷり二十秒たってから頭をあげた乗務員に、山形は言葉をえらぶ。
「ありがとう。勤務終了後にいただくとしよう。ときに、きみ」
「は、はいっ」
「業務中にくつろぐという概念は、JRにはないはずだが、知っているな」
「は…、あ…!」
彼の頬の紅潮が、一瞬にして青ざめる。
「もちろん、今日は特別に祝ってくれたのだろう。今回が最初で最後だ。そうだな」
「は、はい、そうです。そうしますっ」
「気持ちはいただいた。この『つばさ』に乗ってよかったよ」
うつむいた若い乗務員は、その顔をじわじわと赤らめた。高揚ではなく、みずからの恥の自覚だ。やはり素直だな、自覚があるならば育っていくだろうと山形は見守る。
「さ、仕事にもどりなさい」
あこがれの新幹線そのひとに促されて、彼は頭をさげて出ていった。
 山形はドリンクの小びんを手にとると、おしゃれなそれがノンアルコールであることに気づいて笑む。出勤してからはじめての笑みだ。東海道新幹線の言ったとおりだ、自分は、今日一日は山形新幹線を好きなみんなのものなのかと、嘘つきの恋人に思いをはせる。
(こっただ大事にされてるのに、足りないなんて、我ながらぜいたくだずなあ)
いすに腰かけて携帯電話を取り出す。着信はない。
 電話をかけてしまえばいいのだと、わかっている。着信拒否はしていないだろうし、居場所くらいは教えてくれるだろう。しかし、それではダメなのだと山形は考える。
(東海道が言いたくないものを、無理強いするつもりはねえず)
考えながら、それは言い訳だと山形の本音がささやく。
 ほんとうは、怖いのだ。東海道の休暇の理由や、自分に内緒にするわけが、まったく見当がつかないと認めたくないのだ。山陽新幹線は知っていて、自分はなぜ蚊帳の外なのかと苦しいのだ。
 時計を見る。14時が近い、じきに宇都宮に着く。
 自分が東京に戻るのは明日、東海道が仕事に復帰するのがあさって。その間、おそらく連絡は来ないだろうと予想する。
(今日明日は、長くなりそうだず)
山形新幹線は覚悟を決めて、仕事をすべく立ちあがった。
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プロフィール
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削谷 朔(さくたに さく)
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自己紹介:
山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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