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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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 「君を恋う おまけ2-2」の続きです。
 山陽新幹線、上越新幹線、長野新幹線、奥羽本線、そして東海道新幹線と山形新幹線が出てきます。

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君を恋う おまけ3

 七月初旬の昼さがり、東京の上官室は節電励行のため日に日に暑さを増していた。
「山形、これは見たか」
きっちり制服を着込んだ東海道新幹線が、こちらも涼しい顔の山形新幹線に色紙のようなものをさしだした。
「なんだべ」
「奥羽本線から送られてきたのだ」
東海道が送った進物の礼状に同封されていたのだとは言わない。
 山形が開くと、一枚の集合写真だった。四つ切りか六つ切りかしらないが、大きめの台紙におさめられている。
「ああ、飲み会のあとに、みんなで撮ったやつけ」
山形の目が細まる。
「なに、見せて」
「どれどれ」
「ぼくも拝見したいです!」
居あわせた上官たち三人が寄ってくる。
「山形の部下たちだ。よい雰囲気の仲間だったぞ」
自分の手柄のように東海道が話す。
 だが、誰もあいづちをうたない。山形がちらと目をあげる。
「山形の開業日の祝いがな、新庄であったのだ。私鉄なども来て、盛会だったぞ」
東海道は気にせず続ける。
「むろん、山形は慕われていた。上官として威風堂々、かつ地元に密着する親しみやすさをもって万事よく━━」
そのとき、長野新幹線の顔に朱がのぼった。
「す、すみません。ちょっと用事を思い出しまして。お先に業務に戻らせていただきますっ」
言うなり、真っ赤になったまま鞄をつかんで出て行ってしまった。
「なんだ、落ち着きのない。高速鉄道としてはけしからん」
「そこは、真っ赤になったのを心配してやれよ」
山陽新幹線がたしなめる。
「む、そうか。たしかに顔が赤かったな。熱でもあるのだろうか。それはいかん、長野のためにも、業務に支障がでないためにも、早めに」
「ストーップ、東海道」
勝手に回転する東海道の思考をさえぎったのは上越新幹線だ。
「長野は大丈夫だよ、ちょっと照れただけ」
「は?」
なにを照れることがある、と東海道は不満顔だ。
「これ見て、なんとも思わなかったの」
「よく撮れているなと」
「それから」
「あの大人数をよく一枚におさめたなと」
「…それから?」
「和気藹々とした雰囲気がでていて、とてもよいなと」
「……そう」
上越はさじを投げた。
 東海道は山形に視線で助けをもとめるが、恋人はおだやかに黙ったままだ。
「あのさ、東海道ちゃん」
話を拾ったのは山陽だ。
「この写真、なんでバックが金屏風なの?」
「知らん。祝いごとだからではないか」
「金屏風のうしろは床の間なんだあ。けんども、まえにだれかが喧嘩して、壁や柱を傷だらけにしちまってなあ。見場が悪いがら、何かやるときは目隠しするんだず」
「金屏風でなくても」
「たまたま倉庫にあったでなあ。めでてえべ」
「めでたいよ。この上なくおめでたいよ。わかる? 祝じゃなくて、寿レベルなんだよ」
上越の言葉に、弱ったなと目じりを下げる山形と、わかりませんと言いたくなくて黙る東海道。苦労性の山陽は、東海道にわかるように説明する。
「だからね、金屏風を背にした集合写真、台紙つき。これは、結婚式の記念写真を連想させるわけ」
意外そうに東海道が目と口を開ける。
「で、中心には姿勢を正した山形とおまえさん。長野がなんで真っ赤になったか、わかるな?」
東海道は、口をぱくぱくと金魚のように開閉して、それからかあっとのぼせたように赤面した。
「ま、まあ、写真に罪はない。山形、それは保管しておけ。私は急な仕事ができたから、先に出る。では」
そして、新幹線ならではの俊足で出ていった。
「ああ、あついあつい」
 節約奉行の東海道がいなくなると、上越はさっそく冷房をつけた。
「山形は照れないの」
山形は上越を見て
「祝いの記念だ、大事にするべ」
こたえながら写真をしまった。
「なあ、奥羽本線ってどんなやつ」
山陽がきく。さぐるように。
「なして」
「こんな、いかにもな台紙に張ってよこす必要なんかねえだろ」
山陽の心配を理解して
「奥羽はいいやつだ。根っからの本線だ、大丈夫だず。あんがとな」
山形は嬉しげに口の端をあげた。

 後日、それでもと山形新幹線は奥羽本線にきいてみた。
「なして、台紙に張ってくれたんだず」
「お祝いの気持ちですよ」
「なして、おれじゃなく東海道に送っただ」
「おれたちの大事な上官ですから」
 大事にしないと許しませんと、にっこり笑う奥羽本線のその強さ。たった一晩で東海道との仲を見破られてしまったか。本線様は、どれも一筋縄ではいかないのだったと山形は思う。
「りっぱな後ろ盾だ、こころづよいべ」
奥羽の牽制は、おくてな東海道には届かなかったけれど。
 理解者に感謝をこめて、山形は礼をのべた。
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削谷 朔(さくたに さく)
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山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
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