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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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ごぶさたして申し訳ありません。
やっと楽しく書けたので上げさせていただきます。
山陽九州です。
つばめさまはもとより、山陽さんがほんとうに幸せになれそうだなと思って書きました。
山陽さんはもう篠山ではないけど、九州さんはいまだにつばめさまなのかなって気がしています。

+ + + + + + + + + +

笑止

「おれさあ、新幹線で得したなあ、ほんと」
深更。仕事も食事も終わり、だらだらと晩酌になだれこんだ休前の夜。勤勉なものにほど怠惰と欲望と開放感が襲うころあいをはからって山陽新幹線は目じりを下げた。
「は! 走ることに損得なぞ。考えるだに哀れだな。職業に貴賎なしということも知らんのか」
対する想いびと、恋人の九州新幹線はうわばみのように飲んで絶好調の毒舌だ。
「いやいや、お仕事以外の話ですよ、もちろん」
あいかわらずのもの言いにめげることなく言葉を返すと、九州の疑わしげな視線が自分だけに向けられる。まあ、西の上官宿舎には自分たちしか居ないのだが、とんがった前髪のしたの眇められた目は今にも紅く光りそうで、山陽は色っぽいねぇとぞくぞくする。
「だってさ」
酒に紛らせて、言葉にいろをのせる。童女たちやフリーゲージの新幹線や、九州のだいじなだいじな家族の目を盗ませて、せっかく自室に引っ張ってきたのだ。山陽はとうに口説きにかかっていた。
「だっておまえ、おれが赤字路線や廃線だったら見向きもしてないだろ」
自虐的な言葉とうらはらに、自信と抱擁に満ちた口調でつなぐ。山陽は嘘が嫌いだ。だから、どれも本音。このハイレベルなひとに自分をわかってほしい、わかった上で逃げないでほしい。さいわいにして、いま自分はこのひとに軽視されない立場を、そしてそれ以上の情を得ているのだから。
「笑止だな」
九州は瞬間に断ずる。山陽がへらっと笑った。はいはい、そりゃそうですよね。あなたさまに釣り合うわけがありませんよね。
「なー。論外だよな」
自分から話をふったくせに山陽はいくらか傷つく。
「ばかもの、笑止とは肯定ではない。きさまは日本語もわからんのか」
自分をさげすんでいる目に、さげすんでいるはずの目に、なにかじわりと滲むものを見出して山陽はたじろぐ。
(なに言ってんのこの坊ちゃん、わかってないのはおまえさんじゃないか)
そして妥当であろう反論を試みた。
「えー。九州よりはコミュニケーション能力あると思うけどなあ」
真面目なことを言うときにもおどけてしまうのは、もう、性だ。
すると、九州はあごを上げ目を光らせて
「しかたがない。母語さえ満足に解さぬ無教養な輩にもわかるように教えてやろう」
恍惚とした表情で言った。
「あのー、おーい。九州さーん、ひとの話、きいてますかー?」
九州は宙をみつめて宣する。
「きさまは正しい。たしかに、きさまが新幹線でなければ我が視界の端にもひっかからなかったであろう。だからといって、きさまの路線……のみならず東海道、東北、北海道。上越および北陸までを我がものとした暁には、きさまは再び廃線の憂き目に遭うかもしれぬ」
「なにその壮大な未来予想図」
出たよカリスマ特急つばめさま――と山陽は頭をかかえる。話は荒唐無稽なのに、想いびとの本気がわかってしまうだけに、若干ひきつつも言葉を返す。本気ならば受け止めないわけにはいかないと思うあたりが厚情である。
「が、案ずるな。きさまがどのような境遇に堕ちようと見捨てはせんと、そう言ったのだ」
「えーと、それだけの情報量をどうやって笑止の一言から読み取れとおっしゃるんですか、つばめさま」
「ためしに和歌でも習ってみたらどうだ、山陽。きさまのような山出しでも、三十一文字に万感をこめられるようになるかもしれんぞ」
「……ちょっと待って。さっきのそれって、もしかしておれが降格されても別れないって言った?」
ふん、と。九州は品を保ったまま鼻を鳴らした。
「まったく、理解の遅いやつだ」
単純に嬉しくなった山陽は、思いのままに笑顔を咲かせて、九州を抱きしめた。
「うんうん。おれ和歌とか無理。もっとわかりやすく……示して」
さいごの言葉は低く、九州の耳もとへ。
 酩酊か睦言のためか、ほのかに頬を染めた九州は、仕様がないなと目をとじて、恋人の背に腕をまわした。
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プロフィール
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削谷 朔(さくたに さく)
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山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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