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青春さまの青春鉄道、紙端国体劇場作品の二次SSブログです。 同人、腐、女性向けなどに理解のない方、義務教育を終了していない方は、ご遠慮ください。 実在の個人、団体、鉄道等とは一切関係ございません。

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ある日の山形×東海道です。
山陽新幹線がちょっとだけでてきます。

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One day

 そのあさ、東海道新幹線はぱっちりと目がさめました。
 夜明けとともにシャワーを浴びて、掃除と洗濯をはじめます。
 朝日がのぼるのとおなじ速さで、部屋はみるみるきれいになっていきました。
 それからたっぷり時間をかけて、二人ぶんの朝ごはんをつくります。
「よし!」
腰に手をあててうなずいた東海道のはねっ毛が、リズミカルにゆれていました。

 きょうを待っていました。
 しごと第一の東海道ですが、好きなひとといっしょの休日は特別です。
 そのひとは遠くから始発の列車で帰ってきます。
(もうじき、もうじき)
 年代ものの時計の針がチクタクとすすむのを聴くともなしに聴いていました。

 山形新幹線は約束どおり東海道の部屋へやってきました。
 とびついた私服の布地はやわらかく、しっかりした肌ざわり。
 朝ごはんがおいしくて、あとかたづけも楽しくて、あっというまに時間がすぎていきます。
「お茶はわたしが淹れるから」
 山形を食卓にすわらせて、東海道はキッチンにむかいました。とっておきの芋ようかんがあるのです。やけどやケガをしないように、よく気をつけてお湯や包丁をつかいました。
「できたぞ、山形」
はりきってふりむくと、山形は窓ぎわに立っていました。
「……山形?」
そとを見て、ふりむきもしません。
 東海道が窓のそとに目をこらすと、電線に小鳥が集っているのがわかりました。山形は自然のいきものや群れが好きです。とくに、鳥は好きなのです。
(ああ、そうか)
 東海道は、お茶とお菓子をならべて食卓につきました。

 好きなひとの背中を見るのは、うれしいことです。
 そのひとが気をゆるして自分のそばにいるのは、ありがたいことです。
 きっと小鳥たちをいとおしんで、優しいまなざしをしているのだろうと東海道は思います。
 お茶がさめていきます。
 和菓子のつやが鈍っていきます。
 カチコチと、時計の音が耳につきます。
 すこしずつ、すこしずつ。
 東海道のひとみが曇り、肩が落ち、首がかたむき。
 ぴんと張っていた気持ちが、しおれてしまいました。
 呼べば、ふりむくと思います。かるく詫びて食卓についてくれる、笑いかけてくれさえすると知っています。
 でも、東海道は呼びませんでした。
 いいえ、ずっと呼んでいました。
 やまがた、やまがた、と心のなかで。
 やさしいひとです。声に出せば、ふりむいてくれます。
 鳥にもだれにも、優しい目をふりむけるひとだと東海道は思うのです。

 東海道は、そっと寝室にいきました。
 制服にきがえて、音もなく玄関を出ます。
 ドアのすきまから、山形の背中が見えます。
 不器用なのに、こんなときに限ってじょうずに気配を消せました。


 休日に職場をまわるのは、むかしから珍しくありませんでした。しごとのある日は、巡視や綱紀粛正にまとまった時間を取れませんから。
 高速鉄道のなかまは、あれ、といった顔もしましたが、職員や部下たちは礼儀正しく東海道をむかえ、まじめなしごとぶりを見せてくれました。
「よお、東海道」
「きさまは休みじゃないだろう。暇なのか」
とちゅうから山陽新幹線もついてきて、気がついたことについて改善策を話しながらまわります。
 靴音が高くひびき、はねっ毛がいきおいを取りもどして、ふだんの自分がもどってきたと東海道は思います。
 夕方には、いつもの顔で山形に会えるだろうと。
 黙って出てきてしまって、怒られるかな。山形のことだから、怒らないかもしれない。そのほうがよほど恐ろしいな、と。
 そのとき、山陽の足がとまりました。
 山陽の視線のさきに思いがけないひとを見つけて、息をのみます。
「とう、っかいどうっ」
俊足で、私服で、髪を乱して飛びこんできたのは、東海道の好きなひとでした。


 山形は、なぜか山陽と目を見交わしてから、東海道を部屋につれもどしました。
 冷えたお茶とかわいた芋ようかんがならぶ食卓について、ふたりともたがいを見ています。
 頭をさげたのは山形でした。ひざに手をついて、言葉もなく。
 東海道は席を立つと、頭をさげた背中をだきしめました。
 好きなひとが、自分を求めてきてくれたのです。なにも言うことはありません。
 いえ、ほんとうは。胸のなかに、ひとつの問いがありました。
(おまえの好きは。鳥や蟻を好きなのと、おなじものなのだろうか)
 
 それから、仲なおりした恋人たちは、しあわせな休日をすごしました。

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プロフィール
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削谷 朔(さくたに さく)
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山形新幹線×東海道新幹線が好きです。
でも基本的に雑食、無節操ですのでご注意ください。
鉄分のない駄文ですが、よろしければ覗いていってください。
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